センチュリーシネマで「アシュラ」を観る。悪にすべてが飲み込まれていった。

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【公式サイト】映画『アシュラ』2017年3月4日(土) 新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー

アンナム市の市長という立場を利用し、利権をむさぼろうと犯罪を繰り返すパク・ソンべ(ファン・ジョンミン)。刑事のハン・ドギョン(チョン・ウソン)は、末期ガンに侵された妻の治療費稼ぎを理由にその処理を請け負っていた。市長検挙に燃える検事キム・チャイン(クァク・ドウォン)と検察捜査官ド・チャンハク(チョン・マンシク)は、彼を脅迫して捜査への協力を迫る。市長と検事たちの間に立たされたドギョンだが……。

引用元:映画『アシュラ』 – シネマトゥデイ

ソンベがすごく悪い! ファン・ジョンミンの演技がすごい!

市長のソンベが、本当に悪くて…! 人を恐怖で支配する、とんでもない奴。ファン・ジョンミンの怪演っぷりが光る。

怖いだけじゃなくて、ユーモアを入れている。それがまた、笑えないジョークで…。そして「周りが『このジョークに間違いなく対応しないと自分の身が危ない』と思ってしまうだろうなあ」という、気の毒な気持ちになる。

そのユーモアが行き過ぎているのか、ひとつのことにしか集中できない性格なのか、ソンベ市長、パンツ履かずに恫喝する。それを「これ、私が履かせるべきなのか…」困っている人を観て、さらに気の毒な気持ちになる。

ソンベ市長、恫喝するだけじゃなく、ダメなところをあえて演出していたとしたら、もっと怖い。

市長にかかわった人はみな、大きく道をはずしてしまう

市長の悪行に巻き込まれていく人々。悪の道に堕ちていく瞬間や悪に屈する瞬間を観るたびに、無力感に襲われる。最後の砦、ともいえるものですらダメなら、もうなすすべがないじゃないか、という絶望感。

一度堕ちてしまうとはい上がれない怖さ。抜けたくても抜けられない、悪の恐怖。後悔はちょっとだけしている。でも、他にもう行く道がない、これしかないんだという怖さ。

ドギョンと部下のムン・ソンモの関係が変わっていく。ドギョンが思うソンモへの悔しさと、罪悪感。この二人の関係は、観ていてせつない。

こういうものを淡々と描き、その世界の怖さを浮かび上がらせるという、骨太な作品だった。