名演小劇場で「ビフォア・ミッドナイト」を観ました。NHKの大河ドラマって、主人公の生涯を描くことがあって、ひとりで晩年まで演じることがあるけど、あれはメイクなどの力で年を重ねたふりをしてる。一連のこのシリーズは、その役を18年かけて演じてるんですよ! 実年齢に近い役なので、体つきも考えも相応。リアル大河ドラマですよ、これは!

【公式サイト】『ビフォア・ミッドナイト-BeforeMidnight』

パリ在住の小説家ジェシー(イーサン・ホーク)と環境運動家のセリーヌ(ジュリー・デルピー)は、双子の娘を伴いギリシャでバカンスを過ごすことにする。同時にシカゴでジェシーの前妻と暮らす息子ハンク(シーマス・デイヴィー=フィッツパトリック)も呼び寄せる。彼らは共に海辺の町で夏休みを過ごした後、ジェシーはハンクを空港まで見送るが……。

引用元:映画『ビフォア・ミッドナイト』 – シネマトゥデイ

過去2作を観た人ほど感じる、ずしーんとくる重さ

この作品を観る前に、一連のシリーズ作「ビフォア・サンライズ 恋人までの距離」と「ビフォア・サンセット」を観ました。その記憶がまだ鮮明に残っていたので、3作目となるこの作品のなんという重いこと…! もし前の作品を観てなかったら、こんなに重い気持ちになることはなかっただろうなあ。

コミュニケーションツールの違いも、さりげなく描かれている

ストーリーとは関係ないけど、Skype という言葉が出てきたのが印象的。18年前や9年前では考えられなかった手段で、数千キロ離れた相手とコミュニケーションできる。そんな時代での愛の育み方ってどうなっていくんだろうね。新しい結婚のあり方の問題提起をしている、というようにも見えた。

この作品のジェシーとセリーヌは目の前にいる相手を話題にすることはほとんどない。18年前や9年前は、あんなにお互いのことを知ろうと会話してたのに…! 3作を連続して観たら愛の移ろいがすごくよく分かるよ。

上半身裸でケンカしてるセリーヌの姿を観ても、ひとりの男への心の開き方の変化に驚くのです。ほら、ボク、18年の時間をあっという間に体験したでしょ? そりゃ驚くよ。こんな思いをするくらいなら、タイムマシンができても絶対に乗らないでおこう。

40代、残り時間は少ない

この作品「分かってくれないパートナー」へのいら立ちはもちろん描かれているけど、ボクは「もう戻れない人生」へのいら立ちも感じました。家庭・仕事・育児を成り立たせるために辛い思いをしている女性は多い。そして、人生のウエイトを仕事に置いた女性が、それに行き詰まりを感じると、すべてがうまくいかなくなる。限界を感じるんだよね。

限界、っていうのは、社会に残ってる女性が仕事をする難しさだけではなく、40代になった時に感じる、人生の残り時間のなさもある。20代や30代でやりたいと思っていたことができていない、じゃあ40代から先でそれができるか、と言うと、軌道修正しながらチャレンジする自信はない。

なので、この作品は、単に夫と妻という対立じゃなくて、家庭・仕事・人生観というようないろんな面での対立で観ることができる。男でもセリーヌに共感できたり、女でもジェシーに共感できたりするんだろうな。

で、18年経ってとうとう「思ってても言わなかったこと」をセリーヌが口にする。そこからジェシーがとる行動が、この作品唯一のラブストーリー。でも、甘くない。ものすごく苦い、大人の味。オールリセットはできないくらい時は流れてしまったんだなあ…。

過去2作を iTunes Store からダウンロード

今は映画もダウンロードで買えたりレンタルできる時代。便利になりました。うん、やっぱり、過去や未来にこだわらず今を生きていたほうが絶対いいや。

ビフォア・サンセット(字幕版)

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