NHKで「通(つう)」という番組が不定期で放送されています。ものごとを楽しむためのテクニックやうんちくを、その分野のマニアや専門家の取材を通して紹介する新感覚の趣味実用バラエティ、だそうです。昨年秋に放送された第一弾は「焼肉」、先月29日に放送された第二弾は「歌謡曲」でした。…「焼肉」で番組一本、「歌謡曲」で番組一本。どこか「タモリ倶楽部」のにおいを感じます。

番組の内容の一部に、その「タモリ倶楽部」にも出演することがある俳優の半田健人が、体験レポーターのますだおかだにレクチャーするというものがあったそうです。そのレクチャーぶりは、作詞家の阿久悠をうならせたらしいです。

その中のひとつに、歌謡曲とJ-POPの歌詞の違いがありました。歌謡曲の歌詞は、聞き手が自由に解釈できる余地があるけれど、J-POPの歌詞は特定の目的に向けたメッセージ性の強いものだ、という分析。あら、今の歌詞はそういう構造になってるのねえ。

小室哲哉は歌詞を書くときに「のりしろ」を作っておく、と言ってました。解釈の幅を持たせて、それぞれが自分の体験に当てはめて、「この曲、なんかいい。アタシのこと歌ってる」という意識になることが大事、という彼の技法は、まさに歌謡曲の歌詞の作り方。元々そのような技術を持っていた彼が、音楽の制作から流通までに関わることができるようになったプロデューサー時代に爆発的な売上を記録したのもうなずけます。その後、J-POPの時代になって、アーティストのメッセージを楽しむ、ということが聞き手の好みになったとき、小室哲哉プロデュースの曲もチャートから消えていった…ということが言えるかもしれません。

では、そういう「のりしろ」のある歌詞がヒットすれば、みんなが知ってる歌ができるのかどうか…は、チャートに聞いてみましょうか。ヒットチャートにそういう歌詞が多くなってきたら、また新しい時代に来ているのかもしれません。時間があったら、じっくり見てみたいと思います。

ORICON No.1 HITS 500

【写真】こういう本が出ることは、今後あるでしょうか