愛知県東海市と知多市をエリアにしているコミュニティFM、メディアスエフエムで毎週やっている番組は、公開生放送。社屋の1階が商談ができるスペースと、ケーブルテレビやインターネットサービスの体験エリアになっている。

その一角にあるスタジオで毎週しゃべってる。ガラス張りになっていて、中の様子を見ることができる。

今書いていて思ったが、CBCラジオが昔持っていたレインボースタジオを思い出してもらえると分かるかもしれない。またずいぶんマニアックな例えを持ってきたなあ。

きょうはお盆休みに入っていることもあり、スタジオを見学に来た人がいた。顔なじみの人と、見たことのない人。

見たことのない人、じゃないな。見たことのない人々。……人々、とも違うな。お父さんが連れてきた、小学生の姉妹。

小学生姉妹が番組を見に来た

おそろいの服を来ていて、かわいらしい。ふたりとも聡明な顔立ちをしている。小学生姉妹が来るなんて珍しい。いや、1年5カ月やっていて、初めてだ。

きっと、お父さんがケーブルテレビ関連の質問に来たんだろう。そういう人たちが来ているのは、生放送中にブースから見ていると、よくある光景だ。ええ、みなさんがボクを見ているように、ボクもみなさんを見ているんですよ。

しばらくその親子を気にしてたんだけど、なんか想像していたのと違う動きをする。ケーブルテレビが映っている近くの席に座ることなく、スタジオがある方に近づいてきた。そして、備えつけてあるメッセージカードに何か書き始めた!

わ、マジな人たちだ、と思った。何かのついでにラジオの生放送を見ているのではなく、はじめからこれを見に来たんだ!

手書きのメッセージがスタジオ内に運ばれ、曲の後奏でそれを紹介する。時間にして20秒くらい。もうちょっと膨らませたかったんだけど、次にメッセージを読むチャンスが番組の構成上、数十分あとになってしまう。早く読んでおかないと。

メッセージを読む前に、先に番組を見学していた人が「今からさっき書いたメッセージが読まれるよ」というようなことを言ってくれたんだろうか。離れていた姉妹がブース前のガラスに近づいてくれた。ありがたい。ラジオにメッセージを送って、それが読まれる、しかも、自分の目の前でという体験を思い出深いものにしてくれた。

読まれたあとも、姉妹はずっといる。ただ、ブースの前ではなく、遠く離れた対角線側のテレビの前に。まあ、そうだろうな。こっちがやっていることにはそんなに興味がないんだろう。たまたまやっていたので、珍しいからメッセージを書いたんだな。そんなふうに思っていた。

ただ、そんな想像が間違っていたのに気づいたのは、週替りのパートナー、松浦智美さんが天気予報を読みはじめた時。

憧れを壊す権利は、ボクにはない

遠くにいた姉妹の、お姉さんっぽい方が、すっと近づいてきた。ガラスの前までではないけれど、腰を下ろして見てもらえるように置いてある椅子の、少し後ろくらい。そして、遠慮しがちにこっちの様子をのぞいている。松浦さんが天気予報を読んでいるのを、じっと見ている。

わかった。この小学生のお嬢さん、こういうことに興味があるんだ。お父さんに「ラジオをやっているから見に行きたい」って言ったんだ、きっと。近くで見るのは恥ずかしいから遠くにいたけど、アナウンサーのように原稿を読んでいるところは、どうしても見たくなったんだ。

今、この子の人生を左右している。そう思った。今この場面がいい思い出になったら、大きくなって自分もしゃべりたいって思いがより強くなるだろう。ボクがもし、嫌な思いをさせてしまったら、そんなことは思わないかもしれない。

考えすぎでしょうか。でも、ボクがそうだったんですよ。今こんなことしているのは、若かった頃に会ったあんな人やこんな人がよくしてくれたから。憧れって、そういうものですよね。

あの時に、いい思い出になったから、今がある。今度は自分がそういう立場だ。嫌な思いはさせてはいけない。こういうことに憧れている子供の前ではそれを壊さないようにしよう。それだけは、どんな時でも肝に銘じてやっていること。

夢を与える仕事、なんて大げさなもんじゃない。どんなことだって、それを見て憧れる若い人がいるんだよね。そういう視線を感じて、ちゃんとできるのが大人じゃないでしょうか。

放送が終わって気づくと、その姉妹も、お父さんの姿もなかった。もう車に乗ってしまって、車は動き出している。その様子が見えたから、手を振ってみた。すると、スモーク越しで見えにくかったけど、手を振り返してくれた。すぐに帰っちゃったけど、もうちょっとここにいたかったのかな。お父さんに「もう番組は終わったんだから、帰るぞ」とでも言われたんだろうか。

興味なかったら、帰る時もこっちなんか見てないでしょうからね。車が見えなくなるまで、ボクは手を振った。思い出になってもらうために。大きくなって、あなたがこういうことをするようになって、その次の世代に、同じようにやってもらうために。文化の継承、なんていうと大げさになるかな。そんなんじゃなくて、憧れを壊したくなかったから。壊す権利は、ボクにはないから。

今度は月曜から木曜の、どこかにおいで。こんなおっさんはいないから。月曜から木曜は、あなたの憧れのお姉さんたちが日替わりでしゃべってるから。