折出けんいちのウェブサイト

名古屋を中心に活動する、ラジオパーソナリティー/スポーツアナウンサー/声優/朗読家。

日記

言葉へのこだわりが無力になるとき

最近は「中の人、大変だなあ」と思う現場に行くことが多い。そういうところでボクが持っているこだわりを出すのも、なんだかなあと思ってしまう。

ナレーションの依頼、ずいぶん減りました

ナレーションの依頼はとんと減っているんですけど、なんででしょうね。ボクの声がナレーションに向いていないからか、名古屋での収録が減ってきているのか。

全国ネットの番組のナレーションも、当初は毎回行っていたけど「同じセリフだから、前に録ったものを使いますね」になって、たまにしか呼ばれなくなり、いつの間にかその番組での需要がなくなってしまった。ナレーション、女性の方が重宝がられるんでしょうか。低くて渋い声だったら、もうちょっと需要があるのかもしれない。

ボクの声は男っぽいとは言えないので、ハマるものはあまりないかもしれないし、テレビやラジオを見聞きしていてもローカルCMが少なくなっているし、局のアナウンサーが読んでることが多くなってるし。

そういう環境なので、最近は季節ごとに1回あればいい方。ナレーションでレギュラーの依頼があったら嬉しいなあと思いながらも、もうないかなあと思ったりする。

まあ「え、オリデさん、ナレーションできるんですか? てっきり実況の人かと」って思われているかもしれない。実況の依頼が多くなっているのは、ここでよく「実況やってきました」と書いてきたからか。自分のやってきていることを書き残しておくことって、大切だなあ。ナレーションのことも書きたいけど、守秘義務が発生することが多くて、書けないこともあったりするんだよね。

ナレーションの基本だと思っていたことがことごとく通用しなくなってる

という感じで、ナレーションの現場にはあんまりいかなくなっちゃったけど、たまに行くところでは「間に立って調整する人は大変だなあ」と思うことがよくある。

「ひつよう」って読まなきゃいけないか……

あるところで読んだナレーションに「必要なもの」という言葉があって、いつものように読んだら「『必要』の『ひ』が聞こえません」と言われた。

アナウンスの世界では「必要」の「ひ」は母音が無声化する、と教わります。だから「しつよう」と聞こえがち、ああしまった、子音がしっかり出てなかったか、と、リテイクしても「聞こえません」という指摘が。うーん、完璧に母音を無声化してるんだけどなあ。

アクセント辞典の「ひつよう」の項目

そこで気づいたんです。欲しがってる音は、無声化している母音だ、と。次のテイクで、思いっきり「ひつよう」と発音したら、OKになった。アナウンスの基本が、現場の空気に負けた瞬間です。

きっと、クライアントが「聞こえない」って言ったんだろうなあ。従うしかなかったんだろうなあ。

「施行」って「しこう」でいいんだけどなあ……

別の現場での話。「施行」という言葉があり、迷いなく「しこう」って読んだ。気になったのでアクセント辞典で調べて「しこう」と読むことで間違いないことを確認して。

アクセント辞典の「施行」の項目

数日後、決定稿から若干の変更があり、リテイク。決定稿が差し替わることって、あるはずないと思ってたんだけどね。行ってみたら、地名のアクセントの違いやルビの振り間違いの中に「『施行』を『しこう』と読んでいるのは誤読。『せこう』で」と書かれていた。アナウンスの基本が、業界の慣習に負けた瞬間。

「施行」については、業界では「せこう」と読む慣習があるけど、アナウンスでは「しこう」と読むんです。こちらの業界では「施行」を「せこう」と読むのはあり得ないけど、そちらの業界に合わせるんだったら「せこう」で読みますよ。ただ、これは業界向けのナレーションではないんだけどね。

ボクが思ってることは、作っている人も思うんだろうけど、クライアントがそう言うんだから、従うしかないんだろうなあ。

すっかり依頼が少なくなったナレーションの現場で、こういうことが多くなってると、いったいボクがこだわってきたものはなんだろうと思ってしまう。「アナウンスの世界では、実はこうなっていて……」ということが通用しないこと、多くなってるんだろうなあ、と思ってしまう。ボクがこだわってることは、ちゃんとこだわってくれるところで出せばいいかな。

ま、そうは言っても、依頼が少ないんだから、しょうがない。

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