きょうが今年度最後の高校での講義。何度も書いておりますが、みんな、うまい。でも、うまいだけじゃダメ。

ひとつの台本を半年かけてみっちりやってきました。しつこかっただろうし、ボクも飽きてました。それでもみっちりやったのは、個人の力を超えたところで仕事は動くというのを知って欲しかったから。

あそこをこうすればよかったという技術的なことに目が行くのは仕方ない。でも、仕事って全体の調和が取れているかどうかで判断されるものです。多少荒削りでも、みんなの向いている方向がひとつになっている作品の方が心を打つ。

きょうもそんなことがありました。ランダムに組ませてできたグループに、かなり高い技術を持っている人ばかりが集まったものができたんです。でも、発表してもらったものは「うーん…」という感じ。会話をしているんだけど、相手の言ってることを聞いてない感じ。だから、こちらが聴いていても心が動かない。

それが態度にも出ていたんだけどね。悪く言ったら、ふざけている。集中していない。自分の出番だけ集中していっても、全体の雰囲気を作っていないからダメなんだよね。

他のグループの中には、お互いの役の関係性をしっかりつかんで、演出家の立場になっていたボクの意図もしっかり汲んでくれたところもありました。もう言うことない。

でも、半年かけたからね。ひとつのものを仕上げるのにそんなに時間はかけない。どんな大作のアニメでも、5分くらいのシーンのアフレコに半年はかけないでしょう。半年かけていたこの作業をいかに短くするかがこれからの課題だ、と最後に言って一年の講義はおしまい。

滑舌やアクセント、鼻濁音も大事だけど、持っているものをどうやって他人と交わらせてひとつのものを作っていくのか、そういう視点を作っていくといいなと思います。