厳選した素材で料理をする人もいれば、ありものの素材で料理を作る人もいる。どっちがいいんでしょうねえ。しゃべりの世界の場合。

ある大手の声優事務所では、原稿をチェックして突っぱねることもあるんですってね。「こんなのウチの声優には読ませられません」って。

原稿の尺に余裕がないものとか、現場で差し替えられてしまうような固まってない原稿。最悪の場合、声優さんが怒って帰っちゃうとか。どんな大物なんだ!

でも「大物だねえ、すごいねえ」って人ごとのように言うのも違うんだよなあ。原稿の尺に余裕がないものは、ただ時間に合わせるために詰め込んでしまうだけになって、表現のしようがない。

現場で差し替えられてしまうような原稿だって、あるんです。これも、読み手の立場からすると、せっかく読み込んでいったのに一からやり直しってことになっちゃう。

だからこそ一定のクオリティーを保つことができるのだ…と思っても、そういうわけにはいかない事情も分かる。クリエイティブのプロに任せられずに、いろんなところから横やりが入ってくることはよくあることだ。

それに対して聞き分けのいい人でいるべきか、突っぱねてしまう人になるか…。悩ましい。ボクは
しばらく、ありものの素材で料理を作っていくのかな。


声優魂 (星海社新書)