TOHOシネマズ東浦で「音量を上げろタコ!何歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!」を観る。これ、ロールキャベツのようだね。キャベツの葉が、この作品ではナンセンスや独特な演出。

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映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』公式サイト

絶大な人気を誇るロックスターのシン(阿部サダヲ)は、誰にも言えない秘密を抱えていた。それは、彼の歌声が“声帯ドーピング”という方法で作られているということ。しかし彼の喉は副作用で限界の一歩手前まできており、声が出なくなる恐怖におののいていた。ある日シンは、声が小さいストリートミュージシャンのふうか(吉岡里帆)と出会い……。

引用元:音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!! (2018) – シネマトゥデイ

20年経ってもやっぱり分からない!

この作品を撮った三木聡監督といえば、ボクはシティボーイズの公演。「夏への無意識」や「ウルトラシオシオハイミナール」を、分かんないなあ、と思いながら観ていました。

当時、ボクは20代なかば、くらいかな。映画や演劇を観て楽しむ、なんてことはしていなかった頃で「これはきっと、もっといろんなものを観なければ、この面白さは分からないんだろうな」って思いました。

そして、20年ほど経って、この作品を観ることになり、どれだけ理解できたかといえば……やっぱりほとんど理解できない!

ただ、理解できないことが理解できた、というか。感覚で観るんだね、理屈じゃなく。声帯ドーピングという、ぶっとんだ設定には、このくらいのテンションでないとリアリティがでないのかも。もともとリアリティのないお話だし。

分かったのは、絶妙なバランスだということ

でも、観ていて「あるかも……こういうこと」と、一瞬でも思ってしまうのは、演じている方々の熱量。阿部サダヲさんの演技は、ぶっとんだ世界をリアリティのあるものにしていた。

観ている人を置いていくことのないテンションで引っ張っていく。これ、あんまり力を入れすぎると嘘っぽくなるんだろうな。そのあたりの熱の入れ方が、いい感じだった。ちょっと熱いかな、と思っていたら、どんどんこの世界に入っていってしまった。

歌もきちんとしていたね。きちんとしていた、っていうのは、歌詞にコメディやパロディの要素がなかった、ってこと。ここをふざけてしまうと、この作品の世界の説得力がなくなるんだろうから。

嘘なんだろうっていう世界なんだけど、どこかに「ホントかな?」と思うところがあるのは、外しちゃいけないリアリティのポイントをおさえているからなんだろうな。実はこの作品、ものすごいバランス感覚が必要なチューニングなのかもしれない。

そして、ナンセンスで何重にも包まれたメチャクチャな世界なんだけれど、それをはがしていくと、熱いメッセージが入っている。ストレートに言うと照れるから、ナンセンスで包んでいるかのように。

これが今の時代に合っているかは分からないけれど、かつてはこういう手法があった。20代のときに「分かんないなあ」と思っていたものは今でも分からないけれど、40代になって、多少は分かったふりができるようになったかな。