声優になりたい人を教えていたことがあるボクが言うのもなんですが、声優の養成所でなければスキルが教えられないわけではないです。でも、養成所で身につくスキルは役に立ちます。この場合の「スキル」って、ボクの中では違うものを指しています。

Recording mic

誰でも自分そっくりの役を演じるにはスキルは必要ないです。考えることなく「素の自分」で演じられるからね。でも、それ以外の役を演じるには、演じるためのスキルは必要です。自分に似ていないものを演じるために、スキルは必要なんです。

そのスキルが養成所で勉強できる…というふうにも言えないんだよなあ。演じるためのスキルなんて、養成所に頼らなくても自分で本を買って勉強できるもの。自分の演技を録音したり録画したりしてセルフチェックする、ということだってスマートフォンの機能だけでもできてしまいます。

でも、養成所の方が会得しやすいスキルがあります。それは「チームプレイでものを作るスキル」です。演技って、相手がいることがほとんどです。そして、相手の出方によって演技の受け方が変わります。相手のどんな演技でも受けられるようになる練習は、やっぱりひとりではできません。

それから「要求に答えるスキル」。先生からのダメ出しは、仕事で言えば演出家のダメ出し。演出家が求める演技ができなければ、いろんな役を演じられる声優にはなれません。

ひとりで勝手に演じられない窮屈さを学ぶことができるのは、養成所の方が優っています。個人技術ではなく、声優の養成所はチームプレイを学びに行くところだと考えると、養成所の見方が変わるんじゃないでしょうか。