むかしむかし、ボクがまだAMラジオを聞いていた頃のはなし。……あ、いや、今も聞いているけど、AMラジオの遠距離受信をしていた頃のはなし。

電波の特性で、夜は遠くまで飛ぶのがAM波。手持ちのラジオで遠くの放送局が受信できる。神戸のAM局を聞いていたり、福岡のAM局でネット受けしているオールナイトニッポン2部を聞いていたりした。

受信できるだけで、クリアには聞こえない。ノイズ混じりの放送、時にはそれが大きくなって何を言っているのか分からないほどになった。

今じゃ Radiko プレミアムがあるので、どんなに遠くの局でもノイズ混じりの音を聞くなんてことはない。老人が若者に聞かせる昔話、今じゃそれを語る側だ。

コミュニティFMもサイマル放送をしてネットを介して聞ける局が多い。メディアスエフエムの生放送でも、エリアの愛知県東海市や知多市以外の地域からメッセージが届くことがある。

昔住んでいた、という理由で聞き始めるのだろうか。石川啄木が停車場の「人混みの中に…」と詠んでいた訛り、現代人はコミュニティFMのサイマル放送に「そを聞きにいく」。

四国からメッセージを送ってくれる人がいる。きょうの生放送では「スタジオを見に行きます」と送ってくれた。生放送をしているこのスタジオは、エントランスのロビーに面した壁がガラスになっている。自由に出入りができて、自由に見ることができる。

四国からどうやって来るんだろう。電車かな、車かな、それとも自転車? と、週替わりのパートナーの市民パーソナリティー、栗野次実さんと雑談。

番組が始まって1時間を過ぎたあたりで、それらしき人がやってきた。男性。若い。やや疲れている顔をしているのは、朝四国を出て、さっきまで乗り物に乗っていた疲れが出ているのだろうか。

本番中に、ガラス越しに会話。当然向こうの声は聞こえないけど、ノートに書いた文字をこちらに見せてくれることで会話は成立する。ここまでは電車で来たそうだ。

番組が終わるまで見ていってくれた。次の日は豊田のコミュニティFM局を見に行くらしい。台風の進路も気になりますが……と気にしていた。無理はしないでほしい。

四国を巡るのがお遍路さんなら、四国から出てコミュニティFM局を巡るのは逆お遍路さんとでも言えばいいだろうか。

しゃべり手としては放送エリアに向けてしゃべっているけど、そういう内容をエリア外の人はどう聞いているんだろうか。やはり懐かしい気持ちで聞いているのだろうか。自分がこの局でしゃべることをやめてエリア外から放送を聞いた時に、その気持ちは分かるのかもしれない。

あ、きょう来てくれた人から聞くきっかけになったのは何だったのか、質問するのを忘れた。