数年前までは、まさかこの仕事がなくなるとは思っていなかった。それが今は、あと何年この仕事があるんだろうと思う。

コーナーで取り上げた、澤村碧さん。週替りのパートナー、松浦智美さんが彼女のことを説明してくれた。

さわむらみどり。バーチャルアナウンサー。こないだの日曜日、11月5日まで、JR名古屋駅のデジタルサイネージで愛知県の観光情報をPRしていた。

文字を音声にする仕組みなので、読み手がいらない。ひと昔前までは、この手のものもナレーターが読んでいたはず。だからだ。ボクにナレーションの依頼がなくなったのは。

CMナレーションを読んでいた頃が懐かしい。ボクが始める数年前までは、CMナレーションの仕事ももっとあったようだ。一日に3スタジオくらい掛け持ち、あちこち行っていたらしい。

ボクが始めた時にずどーんと不況になって、CMナレーションも少なくなった。徐々に景気がよくなってきているとはいえ、こういうバーチャルアナウンサーが出てきてしまったら、居場所はもうないだろう。

バスの車内放送も、合成音声がアナウンスをしている。今流れている駅の行き先案内だって、次に刷新される時は合成音声になってしまうだろう。

ラジオのニュースや天気予報だって、今はまだ対応できてないけど、技術が上がってよりナチュラルな話し方をしたらどうだろう。あるいは、もうこのレベルでも聞いている人が「それでいい」って思ったら、一気に導入が進むかも。

あちこちにあるアナウンススクールも淘汰されるかも。あれだけ一生懸命やっていた母音の無声化や鼻濁音も、ひょっとしたらどうでもよくなっているかもしれない。

エフエム和歌山に人工知能アナウンサー「ナナコ」が導入されたのを聞いて「あー、終わったー」と思った。市民パーソナリティーを養成する講座に、原稿読みやニュース読みのカリキュラムを入れる必要、なくなったもの。こういうシステムを導入すればすむ話なんだもの。

「ここまでしゃべることができるようになったの! へー、すごい」というのが一般的な感想だろうけど、ボクは「うわー、この先、どうやって生きていこうか……」ってレベルなのですよ。新美南吉の「おぢいさんのランプ」の巳之助の気持ちが、よく分かる。

2017年11月のメディアスエフエムのスタジオ