伏見ミリオン座で「We Love Television?」を観る。本で読んできた欽ちゃんの番組づくりを映像で観ることができて、満足。
カメラを携えた土屋敏男が、萩本欽一の自宅を訪れ、ある提案をする。それは、視聴率30パーセントを超える番組を制作するというものだった。二人は早速行動を開始し、出演者となる女優の田中美佐子と人気お笑いコンビ・次長課長の河本準一との顔合わせ、高須光聖や、猪子寿之が率いるチームラボといったクリエイターらと打ち合わせをこなす。やがて番組制作が進んでいくに従って、萩本だけが知る番組作りの奥義が明らかになる。
「視聴率30パーセントを越える番組」って、あれのことだったのか。観ましたよ、当時。客前コントでの、お笑いコンビ「次長課長」の河本さんのポジションの重要さと、その期待に答える活躍ぶりにこちらも涙したのを覚えてる。
この作品、その番組が出来上がっていく様子を映している。欽ちゃんの番組づくりは著書では知っていたけど、こうやって映像で観るのは初めてだ。
欽ちゃんのこだわりを、映像で観ることができた
この作品でボクが印象に残ったのは、コントのシーンに合う音を探していたこと。効果音ではなく、セリフの声、ね。
嘘くさくならないように、自然になるようにするにはどの音を使うのか。それは欽ちゃんにしか見えていない。それを要求する欽ちゃんと、抽象的なオーダーに困惑する出演者。
自分が経験したCMナレーションの収録を思い出しました。ディレクターの要求に答えるにはどの音を使えばいいかを模索していたなあ。単に声色だけじゃなくて、セリフのひとつひとつの音の上げ下げも工夫しました。
人格を変えるべく声を作ったって、イントネーションが同じだと見破られる。その人格が使いそうなイントネーションがあるんだよね。それを操ることができるかどうかが、うまい人が持つ要素のひとつなんだと思う。
この作品でも欽ちゃんが言っていた「みんなが休んでいる時に仕事をしていると、神様に見つかりやすくなって運がくる」ってのを心の支えにして、17年週末の夜を捧げてきた。いつか神様に見つかるかな、と思いながら。でも、いまだに見つけてもらえない……気がする。やっぱり、誰かがある程度見ていないといけないのかしら。
ボクは偶然をみるために、テレビを観ているのかも
なぜボクがテレビを観ているのか。この作品を観てはっきりした。偶然を観たいんだ。アドリブを観たいんだ。困った時にその人がどうするのか、それを観たいんだ。
出来上がったものを観るのではなく、不完全なものを観るのがテレビ。その状態から、なんとか成立させようとするところにパワーが生まれ、それが引きつける映像になるんだろうな。
でも、観てもらうものを作るには一度しっかりしたものを作らないといけない。だから欽ちゃんは、しつこくリハーサルをして、本番でそれをやらないことを要求する。何が出てくるか分からない緊張感と、必死で修復するパワーが、観ている人を釘づけにするんだよね。
嘘に見えないように、体と言葉がくっつくように舞台を作り、その上でフリーに演じる。あまりにフリー過ぎると形にならないこともあるから、それを防ぐためにリハーサルを繰り返す。欽ちゃんの本で読んでいたことは、なるほどこういうことだったのか。
あと、この作品では当時のクリエイターたちもカメラに収まっているけど、ビックリする人が出てきた。そうか、この時は2011年なんだよな……。ボクがいちばん、衝撃を受けた部分です。
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