日本語で書いてある原稿を読むなんて、日本人なら誰でもできます。しかし、それが仕事になるレベルまでになるには、やはり訓練が必要です。でも、その奥深さに気がつくことができないと仕事にしたくてもできないものです。

先日、原稿読みを聞いていた時なんですが、なんかこう「おっ、いいじゃない」と思う感じがないんです。決定的に悪いところはないんです。パッと聞いたら、ま、いいんじゃないかって思うんですよ。でも、仕事にできるかというと、うーん…と思ってしまう。こちらも、いろんな人の読みを聞いてきてますからね。この読み方になったら仕事になる、というのは分かります。その感じが、聞いていて、ない。

で、アドバイスしました。簡単に言えば「腹式呼吸で声を出すように」ということ。ただ、こんなことはもうほかの先生に言われているだろうから、ボクなりのアドバイスにして。…あ、最近、うまい言い方を思いついたんですよ。これ、かなり具体的にイメージできるな、って。

そしたら! 見違えるほど変わったんです、声が。それまでは、原稿を読んでいるだけに聞こえたのに、説得力があり、教室全体を包む、はっきりした声に様変わりしました。

「こんなに疲れたこと、なかったです」という感想をもらいました。ほんの5分しかその声を出してなかったのに。じゃ、今までどれだけ楽に声を出してたんだ、ってことなんだけどね。そんなものですよ、やっぱり。原稿を読むことは勉強しても、声づくりなんて、なかなかやらないもん。じゃ、発声練習だ、と言ったって、よっぽど声が小さい人でなければ大きな声を出そうなんて思わないし。本当は腹式呼吸を使った、安定した声をつくるトレーニングをすることが大事なんだけどね。

結局、聞いてる人にとってはテクニックは関係ない。印象だけの勝負。でも、読む方はその印象を左右できるテクニックを身につけないと仕事にはできない、ってことですね。