TOHOシネマズ名古屋ベイシティで「愛、アムール」を観る。本当のところは本人しか分からないし、長年そばにいる人は、それをある程度感じることができる。ましてや、一緒にいない人なんて、どんなに心をこめて言葉をかけても、当事者にはうまく伝わらないのかも。
パリ在住の80代の夫婦、ジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)とアンヌ(エマニュエル・リヴァ)。共に音楽教師で、娘はミュージシャンとして活躍と、充実した日々を送っていた。ある日、教え子が開くコンサートに出向いた2人だが、そこでアンヌが病で倒れてしまう。病院に緊急搬送され、かろうじて死だけは免れたものの、半身まひという重い後遺症が残ってしまう。家に帰りたいというアンヌの強い願いから、自宅で彼女の介護を始めるジョルジュ。しかし、少しずつアンヌの症状は悪化していき、ついに死を選びたいと考えるようになり……。
アンヌの思いを尊重すると、病院に行かなかった方がいいんじゃないか…とまで考えてしまうくらい、介護の辛さが綴られていく。それは「どこまで長生きしたいのか」という問題を観客に突きつけているようにも見える。
そして、ジョルジュはアンナを献身的に介護する。途中に出てくる登場人物が、どこか他人ごとのように感じるくらい、空々しく思える。もちろん、みんな心配して言葉をかけているんだけど、介護の様子を観ていると「そんな言葉で慰められるような簡単なもんじゃないんだよ」と思ってしまう。
でも、当事者でない場合は言葉をかけるくらいしかできない。ひょっとすると、自分が思ってもみないような取られ方をして相手を怒らせてしまうかもしれない。それでも言葉をかけるしかできない虚しさ。
じゃあ、当事者でない人も介護の手伝いをすればいいじゃないか、って言うと、それはどうだろう。この作品でも介護士を雇っているけど、続けていくためには「愛」が一番大事なんだろうな。その人を本当に愛していないと、介護はできない。
この作品を観たら、誰もが未来のことを考えると思う。生涯を共にする相手がいてもいなくても、自分が人生をどう締めくくることになるのか。そのための準備は必要だね。
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