ミッドランドスクエアシネマで「『渇き。』」を観る。なぜ父がそこまでして娘を追いかけるのか、それは最後の最後で分かった。でも、それ以上のことを冷静に考えるには、もう一回観ないと。この作品のリズムに乗っかって体で感じながら観るのが一回目は吉。考えちゃダメだ、乗っかるんだ。

映画『渇き。』公式サイト

品行方正だった娘・加奈子(小松菜奈)が部屋に何もかもを残したまま姿を消したと元妻から聞かされ、その行方を追い掛けることにした元刑事で父親の藤島昭和(役所広司)。自身の性格や言動で家族をバラバラにした彼は、そうした過去には目もくれずに自分が思い描く家族像を取り戻そうと躍起になって娘の足取りを調べていく。交友関係や行動を丹念にたどるに従って浮き上がる、加奈子の知られざる素顔に驚きを覚える藤島。やがて、ある手掛かりをつかむが、それと同時に思わぬ事件に直面することになる。

引用元:映画『渇き。』 – シネマトゥデイ

娘が失踪した、と親が聞けば、何か事件に巻き込まれたと思うよね。最初はその線で追いかけるんだけど、だんだんそうではないことが分かってくる。そうだ、今わかった。作品の前半と後半で、昭和が追いかけている対象は違うんだ。それが最後のセリフに現れていたんだ。

この作品に通じている変な世界観をさらに深めているのは、音楽の使われ方。いろんなジャンルのものが使われている。誰の視点なのかで変化をつけていると思うんだけど、その演出が一貫性のないぐにゃっとした世界を表現している。

いわゆる「幸せ」への憧れと、それが手に入らないことへの憎しみから生まれる破壊。昭和も加奈子も、その感情を持っていたのではないだろうか。破壊する行動で傷ついていたのは、本人なのかもしれない。

この作品に漂う暗いムードを、音楽や編集の技を使って変化をつけ、観てる方の感覚をかき回す。観終わったボクは、ふらふら。時間が経って気持ちがまとまってきて、ようやくここまでのものになりました。

しかしまあ、好奇心を持つのはいいけど、それによって人生をメチャクチャにされないように気をつけないと。かと言って、自分が逃げられるとは思えないからなあ。怖いわ、加奈子!