TOHOシネマズ東浦で「羊の木」を観る。この作品、完全版にしたら何時間になっただろう、それを2時間6分に収めても6人の生活が想像できる、吉田大八の手腕が冴える作品。
映画『羊の木』 | 2018年2月3日(土)全国ロードショー
刑期を終えた元受刑者を自治体が受け入れる新仮釈放制度により、閑散とした港町・魚深市に男女6人が移住してくる。市役所職員の月末一(錦戸亮)は彼らの受け入れ担当を命じられるが、移住者たちの過去を住民たちに知られてはならないという決まりがあった。やがて、全員に殺人歴がある犯罪者を受け入れた町と人々の日常に、少しずつ狂いが生じていき……。
絞られてるんだけど、想像してしまいたくなる6人の生活
こういう構成でよかった。6人の生活を細かく観せられたら、お腹いっぱいになっちゃう。事実、このストーリーでも相当濃かったし。
かなり絞られたストーリーになってるけど、それでも、6人のうち誰かか何かをするんじゃないかと思いながら観てしまっているのは、心のどこかに、そういう人に対する気持ちがあるのかもしれない。
6人を迎え入れる時に、月末が同じことをみんなに言ってたけど、あれもいいフリになってたなあ。あのセリフで、こっちの心がこんなに救われるとは思わなかった。
とは言え、まさか! っていう展開にもなっていったし、罪を犯した人を同じようにみてはいけないって気にもなったなあ。
でも、その答えのようなものも、月末と宮腰の会話の中にあった気がする。クリーニング店で仕事を始めた大野や、理髪店で勤め始めた福元のこともそうなんだけど、その人のことをどのくらい受け入れることができるか、なんだよなあ。
実際、もっといろんなことが起こると思うんです。それを絞り込み、6人がこの作品の中にいる意味もしっかり与えた吉田大八監督の作り方が冴えてるんだろうな。太田と月末の父、亮介のあのシーン、まあまあ長かったよね。それもよかった。
バンド練習から感じる、若いときほど明るく感じられない未来
あ、もうひとつ。月末と須藤、それに石田が加わって練習しているバンド。あそこでああいうものを演奏しているってのは、田舎に残ること、あるいは戻ってきてしまったことを選び、ひとつの可能性を閉じたって感じがしてくるのです。
そこに、魚深市の様子も感じとることができるし、自分の状況も重ね合わせられることができるのです。いろいろ諦めたほうが、ふっきれて心がむき出しになれるのかなあ。
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