109シネマズ名古屋で「夜は短し 歩けよ乙女」を観る。時空が歪んでいるような気になり、その世界に涙が止まらない。そこはボクが憧れているものだ。
クラブの後輩である“黒髪の乙女”に恋心を抱く“先輩”は、「なるべく彼女の目に留まる」略してナカメ作戦を実行する。春の先斗町に夏の古本市、秋の学園祭と彼女の姿を追い求めるが、季節はどんどん過ぎていくのに外堀を埋めるばかりで進展させられない。さらに彼は、仲間たちによる珍事件に巻き込まれ……。
黒髪の乙女、あのキャラにはやられる
飾らなくて、独特の雰囲気を持っている。それがボクが黒髪の乙女に抱いた印象。ものすごく酒を飲む、っていうのがいいね。あんなふうに酒が飲める人は、気持ちいい。
いや、酒が飲めない人だって、あの「詭弁踊り」を踊ってくれれれば、盛り上がる。大事なのは、盛り上がった空気を冷まさせないこと。
発する言葉も、独特だったよね。何十冊、何百冊と本を読んできていることがうかがえるような言葉の数々。こういうタイプって、陰にハマると人を寄せつけない感じになるだろうけど、陽にハマるととても魅力的だ。
全編通じた、モラトリアム感。それに涙した
最初の舞台が、夜の京都。酒を飲みまくっているのを見ていると、こっちも飲みたくなってくる。春から初夏に向かっていく時期の夜の気持ちいい空気にあたりながら、家路につきたい。
いや、もうそれより先斗町で飲みたい! 実はこないだ、計画を断念しただけに、より悔しい。
たぶん、いろいろな非日常感が重なった状態にいることが楽しいんだろう。ましてや、彼女たちは大学生。人生のモラトリアムともいえる期間ということも重なって、観ていてとっても楽しそうだ。
そんな楽しさが、絵の雰囲気にとても合っていた。現実のような、夢の中にいるような。時間軸もよく分からなくなり、ますます非日常感が増す。
そして、モラトリアムの極致である、学園祭! ナンセンスさに笑ってしまったよ。あの人たちはもう、あの世界から出られないんじゃないかと思ってしまう。それが実は、うらやましい。
もう、ガンガン泣いてましたよ。うらやましさに。できることならあの頃に戻りたい……って思いながら。でもね「いや、待てよ」と思いまして。ボク、人生を振り返ってもあんな頃はなかったんですよ。
じゃ、なんで泣いてるのか。たぶん、全体に流れている非日常感だ。浮世離れな世界だ。「どちらさんも、大変ですねえ。ま、そんなこともあるかもしれないけど、パーっと忘れちゃいましょう!」って言い切ってるかのような世界を見せられて、いいなあ……って思いながら、泣いてるんだ。
この作品に描かれている恋愛も、そんな世界の一部。いや、恋愛も、現実を忘れさせてくれる要素のひとつなのかもしれないな。
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