TOHOシネマズ名古屋ベイシティで「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」を観る。これはコメディだ。笑えないコメディ。
貧しい家庭に生まれ、厳格な母親ラヴォナ(アリソン・ジャネイ)に育てられたトーニャ・ハーディング(マーゴット・ロビー)。フィギュアスケートの才能に恵まれた彼女は、血のにじむような努力を重ねて、アメリカ代表選手として1992年のアルベールビル、1994年のリレハンメルオリンピックに出場する。ところが、元夫のジェフ・ギルーリー(セバスチャン・スタン)の友人がトーニャのライバルだったナンシー・ケリガンを襲い、その後彼女はフィギュア界から追放されるが……。
なんてコメディだ! 怖いよ!
ここまでコメディだとは思わなかった。背筋が凍るコメディとは、このことだと思いましたよ。アンジャッシュのコントでも、ここまでのものは書けない。
ナンシー・ケリガン襲撃事件はもう四半世紀くらい前のことになりますか。大会の会場で襲われ、膝をケガして出られなくなったナンシー・ケリガン。それを仕掛けたとされたのが、ライバルのトーニャ・ハーディング。
ボクも「そういう事件があったなあ」というのは覚えていたし、その後もニュースでなんとなく知ってはいた程度だったんです。
そこから四半世紀経っていて、この事件をある程度冷静にみることができる。そうしたら、この事件が持っている、ある意味奇妙なところがみえてきました。
そんなことになるんだ! っていうような展開で話が転がっていくし、それが事件になっていくんだからねえ……。
これ、映画の脚本では書けないと思いますよ。整合性がない、やり直しだ、って言われそう。事実は小説より奇なり。事実だからこそ作品にできたんだろうなあ。
みんな身勝手にふるまってるから、とんでもない方に転がっていく
登場人物がみんな身勝手。そりゃ、そんな展開になってもおかしくない。自分のことしか考えてないし、トーニャがああいうキャラクターなのも、母親のラヴォナの子育ての考え方からでしょ? 大きく間違ってる気がするんだけど、ほんのちょっとだけ、言い分も分からないでもない。
でも「こういう境遇だから、この人はかわいそうでしょ?」っていう描き方じゃないんですよね。その人についての嫌な面とその心境っていうのを、淡々とみせていってるだけ。
それが、この事件について、それぞれが真実というものを語っているんですよ。観ているボクたちも。そして、ラストのラストで、そのことについても問いかけてくるんです。もう頭がクラクラする。
ボクは素直に、トーニャがかわいそうだと思いましたよ。周りの人間関係にも、時代にも振り回されてる感じがして。
コメントを残す