地下鉄の中、つり革を持って立っていると、背後でなにかぶつぶついってる声。どうやら、背後に座っている70代くらいの女性が「ここ開いてるよ」と言っているようだ。でも、それは誰ともなく言っているように聞こえる。その女性の前にも立っている人がいるので、もしかしたらその人に言っているかもしれないし。はっきり自分に向けてくれれば…という中で、その女性が「そうかい、こんなばばぁの隣には誰も座りたくないわね」と卑屈そうに言いました。その言葉に、ボクの何かにスイッチが入ったんです。

「なに、ばあさん、ボクに言ってくれたんかね。次で降りるんだけど、ありがとね。ちょっと座っちゃおうかなあ」と、若干の名古屋弁を交えながらその女性の隣にわざとぴったり座って…というシミュレーション。実際はやらなかったんですけど、そういうことを考えたのは確か。

その女性、なんか寂しい生活をしてるんじゃないかなあって思ったんです。一人暮らしであんまりしゃべらないまま生活してる中、たまに地下鉄に乗ったらそんな状況。ちょっと親切心を出してみたら、無視された…。という想像をしちゃって、だったらその好意に思いっきり乗っかってやろうと思ったんですよ。遠慮するより、そっちの方がいいかなって。

残念だったのは、女性の声がぼそぼそとしか聞こえなかったこと。もうちょっとハッキリ言っていたら、その作戦を実行したのに。せっかく親切にしたのに無視された…と思われてしまっても、ちょっとさみしいしねえ。