109シネマズ名古屋で「アメリカン・スナイパー」を観る。戦闘のリアリティに目や耳を奪われるけど、それだけではない。怖いのは、その後に襲い掛かってくる心や体の変化。徐々に兵士の体を蝕んでいく。
イラク戦争に出征した、アメリカ海軍特殊部隊ネイビーシールズの隊員クリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)。スナイパーである彼は、「誰一人残さない」というネイビーシールズのモットーに従うようにして仲間たちを徹底的に援護する。人並み外れた狙撃の精度からレジェンドと称されるが、その一方で反乱軍に賞金を懸けられてしまう。故郷に残した家族を思いながら、スコープをのぞき、引き金を引き、敵の命を奪っていくクリス。4回にわたってイラクに送られた彼は、心に深い傷を負ってしまう。
同種族を殺すのは人間だけだ、って聞いたことがある。本来、動物は同じ種族を殺さないはずなんだ。無理やり理由をつけて、人間は人間を殺す。心へのダメージだって、相当深いはずなんだ。
正義と悪のふたつには簡単に分けられない世界。この作品は一見、一方的に正義と悪を分けているように見えるけど、数秒のカットで正義と悪を逆転させるようなものを映し込んでいる。相手のスナイパーにも家族があるんだ…ってことを、さり気なく入れている。
さり気ない、と言えば帰国してから現れる体や心の変化の描写。徐々に、静かに蝕まれていくようなシーンの数々。こちらも一見、戦闘の派手さに隠れて分からない。でも、本当はこっちを描きたいんだよね。
最初は「あれ?」っていう変化が、だんだん日常生活に支障をきたすくらいになっていく。この作品を観ていて怖いと思ったのは、人が死ぬよりも徐々に変わっていくスナイパーの心なのだ。そして、ラストシーンではもう一回ガーンとくる。
淡々と描かれているぶん、観ている方がじっくり考えるようになっている。エンドロールでじっくり時間があるから、そこで考えをまとめてみたらいいだろうな。
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