伏見ミリオン座で「ありがとう、トニ・エルドマン」を観る。コントのような展開。でも、そこにはきちんと愛がある。テンションが合わないとうっとうしい愛が。

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映画『ありがとう、トニ・エルドマン』公式サイト

ルーマニアのブカレストにあるコンサルタント会社勤務の女性イネス。仕事ばかりの忙しい毎日を送っている娘が心配でならない父親のヴィンフリートは、ブカレストを訪れる。悪ふざけが大好きな彼と折り合いの悪い彼女は、やむなく数日間一緒に過ごすことに。やっと父親が帰国してホッと一息つくイネスだったが、トニ・エルドマンという別人に成り切った彼が再びやって来る。父の真意がわからず、イネスは混乱するが……。

引用元:映画『ありがとう、トニ・エルドマン』 – シネマトゥデイ

親の心配を子はうざったく感じるのは、どこもいっしょだ

観ていたら、博多華丸さんを思い出した。華丸さん、ボクの頭の中で言ってる。「酒のチャンポンと親の意見は後から効いてくるけんね!」いつ頃から、親の意見をありがたいと思うようになるんだろう。

もうひとつ思い出したのは、岡田あーみんさんのマンガ「お父さんは心配症」。自立しているといっても、親は子供のことがやっぱり心配。

トニ・エルドマンが画面の遠くにいるのが面白くてね。コントでよくあるシーンだ。奇抜なキャラクターが隅っこでゴチョゴチョやっている、あの感じ。

自分の父親が変なキャラクターになって目の前に現れたら、嫌だよねえ……。それが上司や同僚の前だったり、大事な取引先の前だったら、もっと嫌だよねえ……。

親は分かってる。子が無理しているのを

ただ、イネスも負けてはいない。エルドマンを利用する。このあたり、策士。さすがやり手のコンサルタントだ。ただやられっぱなしではない。

でもね、イネスはやっぱり無理をしてるなあって思うんですよ。タフな交渉をするために、気の抜けない日々を送ってるのが分かるから。エルドマンはそれを感じるんだよね、親として。

プライベートのつきあいも、その後のキャリアにつながると思ったら気が抜けない。そんな状況が続いている中、自分が開いたパーティーでとうとう「パーン!」となってしまう。そして、本当に自分のそばにいてくれるのは誰か、そこでハッキリする。

なんだかんだいっても、親は子供の様子が分かるんだろうねえ……。子供が何も言わなくても。これは自分が親になってみないと分からないんだろうなあ。

個人的には、アンカが好き。先輩に憧れる、かわいい後輩像

イングリッド・ビスが演じるアンカがよかったですね。憧れの先輩、イネスにかいがいしくついている後輩。パーティーでプレゼントを渡すシーンの、あの先輩後輩の感じ、よかった。パーティーの状況も含めて。

取引先や上司のプレッシャーに潰されそうになりながら、いつも夜遅くに帰り、朝早く出社してる日々が続いている人がこの作品を観たら、ふっと肩の力が抜けるかも。あるいは、生き方を見直すところまでいくかもしれないな。