NHK「人名探求バラエティー 日本人のおなまえっ!」で「山田」を発音するのは気持ちいいと言ってました。音声学の権威が「山田」の発音を分析して、発音しやすい音が並んでいることを説明していたのです。

分かるよ、分かる。アナウンスを教えるために日本語の音の構造まで勉強したボクは「山田」を言う時の気持ちよさはに説明できる。それはもう偏執狂。

「や行萌え」と「『だ』のたまご」

まず始めの気持ちよさ。いきなり「や」って言わないんだもん。「や」って言う前に口が準備するんだもん。そういう「今から『山田』を発音させていただきます」っていう奥ゆかしさが、気持ちいい。

なんでかって言うと「や」は半母音だから……っていう、めんどくさい説明はやめておこう。「や」を声に出す前のコンマ何秒の準備段階が、萌え要素。

これ「や行萌え」っていう、新しいジャンルになるかも。

「ま」だって、そうです。発音の前に口を閉じるという準備段階がある。これも奥ゆかしいじゃないですか! そして「だ」。「ま」で口が思いっきり開いた後に、喉の奥に生まれる「だ」のたまご。「このあと『だ』を言うんだっ! ああっ、『だ』を言いたいっ!」という衝動のようなものが生まれる。

有声歯茎破裂音をこんな風に書くなんて、何かに取り憑かれている感じもしますが。まあいいでしょう。とにかく「山田」には気持ちよく、リズムよく発音できる要素ばかりなんです。

オリデはヤマダに憧れる

「折出」ではこうはいかない。まず「お」の口の開け方は小さい。喉の奥から出てくる声には「や」のような明るさはない。

その口の狭さで「り」に向かう。舌遣いがうまくないと「り」が「い」に聞こえてしまう。「おいで」を「おりで」と聞き間違えて反応してしまったこと、数知れず。

そして、フィニッシュの「で」に向かっていく時の、着地の決めづらさ。「山田」の「ま」から「だ」に向かっていく時と同じように「で」のたまごは生まれているのに、喉が開いてない「り」が前にきていることからの言いにくさ。

「り」と「で」のコンビネーションは、舌が大活躍。「り」を発音し終わった後に、また同じポジションに戻して「で」のたまごを生み出さなきゃいけない。舌の筋肉、大活躍。それはまるで、ボディービルダー。折出は舌先マッチョだ。

かくして、比較的めんどくさい発音の多いオリデは、明るくクリアな音が多いヤマダに憧れるのです。サンプルはボクひとりですが。ゴチャゴチャ言ってないで、名前で発音の練習します……。